やわらかチキンの独り言

とろとろ〜ほろほろ〜

【新説 桃太郎】第九話

前回までの【新説 桃太郎】

 

「鬼」の蔓延る世界に、桃を媒体に生み出された人造人間である桃太郎。ひょんなことから「犬」と三人の美しい「猿」とで鬼退治を目指すのであった…

 

 

 

 

 

「あの〜桃太郎さん。目的地まではまだ歩きますか?」

美詠が尋ねる。その後ろで維字がうんうんと頷く。

「道に迷ったのか〜?ったく、しょうがねぇな〜」

最後尾の喜来が通る声で愚痴を言う。全く息の合った三姉妹だ。

 

「道に迷ってなどいない。もうすぐで目的地の村に着く。まぁこんな山奥の村だから、喜来の期待するようなものは無いだろうがな」

俺が喜来に見えるように応えていると、先を歩く「犬」が聞いてくる。

 

「お〜い、桃太郎。俺たちの目的地は山奥の小さな村なのか?」

「あぁ。」

と、「犬」の方を見ずに答える。

 

「そしたら…ここは道を間違えたかもな。」

その言葉に振り返って、目線を遠くへやると俺は驚いた。

 

そこは、小さな村でも山奥の寂れた村などではなかった。大きな城?いや、城というよりは蔵、それも見たことのない大きさのものが10いや、20は建っており煙がもくもくと煙突から途切れなく棚引いていた。

 

「な、なんなんだ?」

俺が唖然としていると前の方から、警備と思われる屈強な男が二人近付いてくる。

 

「お前達は何者だ?ここで何をしている?許可のない者は即刻立ち去れ!」

出会い頭の無礼な態度に苛立ちを覚えたが、俺は目的地である、ここが何なのかという単純な興味が勝った。

 

「突然の訪問で申し訳ない。俺は桃太郎。鬼退治を目的に旅をしている。不躾だが、ここに用があるのだが城主はいるか?」

 

「?駄目だ駄目だ。お前らのような何処の馬の骨とも分からぬような奴らをケビン様に会わせる訳にはいかん!」

鼻息も荒く警備が吠える。

 

「犬」の表情がピクリと動いた。

「ケビン?!お前らの親分はあのケビン・バフェットなのか?」

「如何にも」

 

「おい、お前の知り合いなのか?」

俺の質問に「犬」は首を横に振りながら、

「いや、直接は会ったことはないが聞いたことがある。随分と羽振りの良い奴でな。金への鼻が効く奴でもある。俺が日本の不思議な桃に目をつけた時、奴も同じタイミングで日本に来るという噂があった。ただ、それ以来何も音沙汰が無かったから噂だと思っていたが、まさかこんな馬鹿デケェ工場建ててやがるとはな…」

 

「工場?ここで何を作っているんだ?」

俺の質問に「犬」は俺の腰元を指さし、

「お前の腰についてるだんごの袋にも付いてるだろ?KBって。それはケビン・バフェット印のだんごだよ。工場のてっぺんにもあるだろ?そのマーク」

俺が老夫婦から渡された袋に入っただんごの製造工場だって?!?!