ZOZOZOZOZOZOZOZOZOのうち
昨夜、小学校一年生からの付き合いになる友人と飲んだ。
彼は、昔からオシャレで私の密かな憧れであった。高校生の時に、3万円もする綺麗な色落ちジーンズを履いていた。幼馴染の草彅剛といったところだ。
そんな彼が、数年前から洋服全てをZOZOTOWNで購入している。Mr.ZOZOTOWNになってしまったのだ。彼のZOZOTOWNへの信頼度といったらない。彼の洋服は、全てZOZOTOWNで揃えられている。もうZOZOTOWNの住民なのだ。
帰省する度に会っているのだが、その時にするやり取りは…
「そのアウター新しいね、どこで買ったの?」
「ZOZOTOWN」
「え、インナーは?」
「ZOZOTOWN」
「もしかして…ジーンズも?」
「ZOZOTOWN」
「やっぱり…ブ、ブーツも?!」
「ZOZOTOWN」
もうZOZOTOWNのゲシュタルト崩壊である。
ここまで彼がZOZOTOWNに依存してしまったのには訳がある。彼は人よりもコミュニケーション能力が高くない。いや、顔見知り以外と話したくないのである。その傾向は、中学生よりも高校生、高校生よりも大学生へと強くなった。
顔見知り以外というのは、自分の両親と兄弟、祖父母や親戚。あとは私を含めた幼馴染、だけ。つまり、日本の人口約一億二千万人とのコミュニケーションを拒んでいるのだ。
そんな彼にとって、服屋の店員との会話は地獄でしかなかったのである。
「良かったら試着してみて下さいね〜」
「ZOZOTOw…」
「…? あ、それ今季の新作なんですよ〜」
「ZOZOt…」
「ゾゾ?あ〜想像よりも着やすいですよ!!」
「ZOZo…」
しかし、彼はインターネット上にある都市、ZOZOTOWNでなら普段の自分を隠さずに生きられるのだ。服屋の店員からの執拗なフィッティングルームへの勧誘も受け流し、ブランドの自己中な流行もアウトオブ眼中である。
4388ブランドが彼の前にひれ伏しているのだ。彼は住民でありながら、さながらZOZOTOWNという日本最大級の買い物都市の支配者である。
なぜなら、彼が興味を示さないブランドは、サイト内でいくら声を張り上げても陽の目を見ることはない。だから、少しでも気を引こうと出来るだけ多くの商品をセールと称して値引きしてみせるのである。
最近では、彼の財政状況を鑑みてか「ツケ払い」なるシステムが導入されたらしい。利用すると2ヶ月先まで支払いを待ってくれるらしい。凄い信頼されてるんだな。江戸っ子か!
そして、今年も例年の如く彼と再会し、同じ質問をした。
「お、それカッコいいね。ZOZOTOWN?」
ブンブンと首を横に振る。
「え、違うの?そしたらBEAMSとか?」
私は、彼の変化に少し嬉しくなって聞いてみた。
「ZOZOUSED」
「結局、ZOZOかいっ!!!」
その後、彼からZOZOUSEDというのは、ほぼ新品と変わらない物もあるようで、最近はもっぱらZOZOUSEDを利用しているとのこと。もう新品の服は買えなくなるとか、欲しい時に買える!と強力なオススメをもらったが、即刻クリーングオフしたい気分であった。