やわらかチキンの独り言

とろとろ〜ほろほろ〜

行きつけの安藤サクラみたいなつけ麺屋にて

私は、つけ麺が好きだ。いや、大好きだ。

 

北海道出身で、しかも味噌ラーメンで有名な札幌市の出身だが、つけ麺が好きだ。勿論、通常のラーメンも好きだが、好きなものを選べるならつけ麺だ。

 

そんな私には、行きつけのつけ麺屋がある。それも、最寄駅から1分以内に。つまり常連だ。

 

どれ位通っていたかというと、多い時で週5だ。常人であれば間違いなく飽きる。だが、私はそれくらい好きなのだ。ゾッコンだ。

 

味は、つけ麺といえばこの味!という位スタンダード。しかし、それでいて何日間か食べないと、また食べたくなるような魔性の味。それだけでなく、メニューも豊富でチャレンジ精神も忘れない。

言わば安藤サクラみたいなつけ麺屋だ。

 

 

 

しかし、私と安藤サクラとの関係が最初から上手くいったわけではない。

 

最初は、右も左も分からないため、安藤サクラの勧めるメニューのつけ麺を注文した。すると、どうだ?一目惚れさ!あぁ、一目惚れさ!!あんなに最初は躊躇したのに、食べてしまったら虜さ。それが彼女とのファーストインプレッション。

 

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しかし、2回目の訪問で事件が起きた!

 

私は、ざる蕎麦にはワサビ!かけ蕎麦には七味!餃子には柚子胡椒!と、辛い薬味には目が無い。そこで、安藤サクラが「○○辛つけ麺」なる商品を提供しているではないか。無視なんて出来ない私は、即座にその食券ボタンを押した!!何なら早押しで2連打だ!!

 

席についてすぐ、安藤サクラ(店員さん)が食券を確認しに来る。そこで「お客様…こちらの商品は非常に辛いです。辛さは大丈夫ですか?」と聞いてきた。

 

私は「おい!見た目や評判だけで、俺が判断するような男に見えるのか?!」とも言えず、小さな声で「はい…」と告げた。

 

それから5分後、運ばれて来たのは真っ赤な一味で全身を覆った…いや、つけ汁の上に降り積もった赤い雪の山であった。私は一瞬、冷や汗をかいたが誰にも悟られることなく、安藤サクラ(店員さん)にただ「ありがとう…」と返した。

 

そして、スタンダードなつけ麺と同じ流れで口に運ぶ…そして、吹いた。割りと最大に。カッコ悪いとこ見せちまったな…こんなの蒙古タンメン中本以来だぜ。(←北極ではなく、通常の蒙古タンメン)

 

むせながら、そして、時に手術中の外科医のように「汗」と自分の左手に命令しながら、何とか完食した。その後の割りスープなんて、楽しむ余裕なんて全く無かったよ。俺の完敗だ、サクラ

 

 

 

2回目の事件以降、私は仕事の忙しさを言い訳に、なかなか3回目の訪問が出来ず、疎遠となっていた。

 

しかし、仕事が早く切り上げることが出来た日。その日が必然的に3回目の訪問となった。

 

向こうは、あの事件のことなんてこれっぽっちも気にしていない。むしろ、はじめましてみたいな挨拶をしてくる。良いさ、好きなだけ軽蔑しな。私は、性懲りもなくやってきた負け犬さ。

 

そんな意気消沈している私は、サクラとの最初の出会いを思い出すため、スタンダードなつけ麺を選び、案内された席へと腰掛ける。

 

スマホを持っていても、何処か虚ろな私の視線にある物がとまった!あれは…一味?!しかも、デカイ容器に入っている!これは、無理して激辛メニューを頼まなくても、自分のペースで自分の好みの分量の一味を入れられるということだ!!そして、それをは最初から許容していたというのか!!!

 

何なんだ!こんな仕打ち。酷いじゃないか!!は、その一味を常備しておきながら、敢えて激辛好きと豪語する奴の鼻をへし折ることが目的だったのか?!とんだ悪女だ…いや、とんだ噛ませ犬だよ。俺は。

 

私の妄想が加速している途中で、「おまたせしました」と告げた(店員さん)の顔が少し笑っているように見えたが、きっと気のせいだろう。

 

私は、一口、二口と本来のつけ麺の味わいを楽しみながら、卓上の一味に手を伸ばした。そして、ひと振り、ふた振りと自分の限界を見極めながら、つけ麺を楽しんだ。もちろん、割りスープもな。

 

 

 

それからも私は、定期的に安藤サクラに通っている。そこで、おそらく初めてだなと思われる客が「○○辛つけ麺」を注文しているのを見る度に、「またの勝ちだよ」と小さく呟くのであった。