やわらかチキンの独り言

とろとろ〜ほろほろ〜

【新説 桃太郎】第十三話

前回までの【新説 桃太郎】

「鬼」の蔓延る世界に、桃を媒体に生み出された人造人間である桃太郎。「犬」と三人の美しい「猿」と訪れた村で、不思議な桃からだんごを製造する工場を見つけた。そこへ桃太郎の育ての親であるお爺ちゃんが、「鬼」は元々人間であると告白した。

 

 

 

 

 

「おい!小童!本当に政府がお前のような奴に、桃の商業利用なぞ認めたのか?!答えろ!!」

ドスの効いたお爺ちゃんに、泣きそうなケビンJr.が弱々しく語り出す。

 

「う、う、うぅ…実は、お祖父様から日本政府へ多額の寄付がされたんだ…それは、不思議な桃が人体に与える影響について調査する機関の設立。その研究のための資金だった。俺は、その研究所の所長として配属されたんだ。ぐすん。で、でも!俺はお祖父様にもお父様にも、商人として認めてもらいたくて…それで、食べてみたら美味いという情報だったから、それで一儲けしたら認めてもらえると思って…すまない。そんな副作用があるとは知らなかったんだ…」

半ベソかいてケビンJr.が本当のことを話すと、お爺ちゃんの顔がいつもの穏やかな優しい顔に戻っていた。

 

「そうか。よく話したなケビンJr.とやら。じゃがな、お前は既に認められておるぞ」

 

「え?どうして?こんな小さな島国に飛ばされたのに…」

 

「今の世の中を恐怖に陥れた鬼…その鬼の原因となる桃を研究する施設の長として選ばれたのじゃろう?それは、人類を助ける最前線に立たせたということじゃ。そんなところに、認めていない。期待していない孫なぞ長に指名すると思うのか?儂なら、そんな大役を任せられる孫がいるだけで、自慢の孫じゃわい!」

ニカッと笑うお爺ちゃんの顔に、ケビンJr.は笑顔を取り戻していた。

 

「ところで、お爺ちゃん。このだんごって危険なんだろ?なんで俺に渡したんだよ。危うく食っちゃうところだろ?」

俺がずっと言えなかった疑問をぶつけた。

 

「人間が食せば、その魅力と成長成分による副作用で鬼と化す桃。じゃが、桃から生まれたお前にとって、それは無限の可能性を秘めただんごなんじゃ」

 

お爺ちゃんの話に疑問符がついた俺に、「犬」が話に割って入ってきた。

「そう。この不思議な桃から造られた人造人間であるお前にとって、桃の驚異的な成長成分を摂取するということは、お前を更に強化出来るということだ。それも副作用なしでな!」

得意気な「犬」の顔にイラつきを覚えたのは、言うまでもない。