【新説 桃太郎】第十二話
前回までの【新説 桃太郎】
「鬼」の蔓延る世界に、桃を媒体に生み出された人造人間である桃太郎。ひょんなことから「犬」と三人の美しい「猿」と訪れた村で、不思議な桃からだんごを製造する工場を見つけた。そこへ桃太郎の育ての父こと、お爺ちゃんが現れ、不思議な桃の秘密を語り出した…
「「犬」の説明にもあったが、この桃は余りの美味しさ故に脳内麻薬の分泌、そして高揚感が訪れる。その効果を維持しようと過剰摂取することが問題なんじゃ…」
お爺ちゃんが俯く。
「はん!その通りだ。この美味い桃からだんごを作り、日本全国に売りまくるのが我がバフェット家の目的。それの何が悪い?!」
ケビンJr.が目を見開き、腕組みながら威張り散らす。
ギロリと鬼ハンター時代のお爺ちゃんの目力がケビンJr.を黙らせる。
「この桃には、他の桃よりも速く成長する成分があることが分かってある。そして、それは人間にとっても同じ効果があることが先程、分かったのじゃ。「犬」よ、お前の仲間が突き止めてくれたよ。ありがとう。」
「犬」は親指をビシッと上げ、立派な犬歯を見せて応えた。
「同じ効果ってどういうこと?早く成長するのか?」
俺が素朴な質問をお爺ちゃんへ投げ掛けた。
「あぁ、桃では早く成長するだけじゃ。だがな、こと人間においては違う。その桃を過剰に摂取したものは、筋肉がみるみる成長し隆々となる。顔も桃欲しさに常に飢えており、険しくなっていく。そして、徐々に我を忘れ、暴力的となっていく。最終的には…体の一部の骨が異常な成長をしてしまうのじゃ。」
「体の一部って…それは…」
「そう、『角』じゃ。我々が『鬼』と言って恐れている者は、元々は人間じゃ。だが、不思議な桃に魅せられた者達は徐々に『鬼』と化すのじゃ。」
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
お爺ちゃんの衝撃的な発言に、その場にいた全員が凍りついた。
「あの、つまり『鬼』となった者からは桃の香りがするのでしょうか?」
美詠が問う。
「あぁ、血生臭い者が多いが、成り立ての者は確かに桃の香りが残っておるかも知れないな…」
お爺ちゃんの答えに美詠はその場に崩れた。
喜来と維字が近付き、寄り添う。
「そのじいさんの話が本当なら、私達のお父さんを殺したのはやはり桃太郎さんではなく、『鬼』ということですね…」
「そっか、そしたら桃太郎と一緒に『鬼』退治することが、お父さんの仇を取ることになるな」
喜来が拳を強く握り、怒りの感情を何とか抑え込んでいる。横で維字も決意を固めた表情をしている。
「日本政府はこの事実を知って、公表はせずに今日まで至る。しかし、桃の管理はこれ以上の被害を防ぐために、厳しく統制下に置いていた。しかし、このような商売人の手に渡してしまったという事実を聞いて儂は確かめに来たのじゃ。おい!小童!!本当に政府が桃の商業利用を認めたのか?!言葉に気を付けろよ?嘘を言えば、すぐに叩っ斬るぞ!!!!!」
お爺ちゃんの眠れる鬼ハンターが、ケビンJr.を更に小さく見せた。