やわらかチキンの独り言

とろとろ〜ほろほろ〜

【新説 桃太郎】第十一話

前回までの【新説 桃太郎】

「鬼」の蔓延る世界に、桃を媒体に生み出された人造人間である桃太郎。ひょんなことから「犬」と三人の美しい「猿」と訪れた村で、不思議な桃からだんごを製造する工場を見つけた。

 

 

 

 

 

「ダメじゃ!!そのだんごを売るなんてことをしてはいかん!」

と、大きな声がした方を振り向くと…

 

「お爺ちゃん?!」

そこに立っていたのは、俺を鬼ハンターへと育ててくれたお爺ちゃんがいた。だが、いるはずもない姿に一瞬だが戸惑い、動かないでいるとお爺ちゃんが語り出した。

 

「そのだんごは決して売ってはならぬ。もし、それを食べてしまったら…」

途中まで話したところでお爺ちゃんは口を噤んでしまった。

 

「何だ?今日は次から次へと無礼な奴がやって来るのぉ。そもそも食べたのこともない奴に指図なんかされてたまるか!」

ケビンJr.がまくし立てる。その言葉に決心したようにお爺ちゃんが顔を上げた。

 

「あぁ、そのだんごを食べたことなんぞない。食べたくもない!」

おいおい、そんな物渡すなよ。

「ただ…それの原料である不思議な桃を食べた者の末路は嫌という程見てきた…」

 

そう言うと、こちらを真っ直ぐ見て

「桃太郎や。この話はお前には話すまいと決めていたが、やはり運命なのだな…よく聞いておくのじゃ」

そう告げた顔は、これまで見てきた時に優しく、時に厳しかった顔ではなく、かつての鬼ハンターだった頃の話をする顔だった。俺はこくりと一度だけ頷いた。

 

「不思議な桃の始まりは、古くは中国から伝えられたと言われている。沢山の桃の木の中で、一つだけ特別なのがあった。それは他のものよりも、早く力強く育った。人々はその木を神と崇めて大切にしたと言う。そして、その木になる桃は甘美な香りと、溢れる果汁でも人々を魅了した。そして、いつしかその桃を独占しようと考える者が現れた。その者は集まり、組織を作り、やがて他の者が桃を食べる事を禁じた。しかし、この桃には秘密があったのだ…それも恐ろしい秘密がな。「犬」よ。お前は既に気づいておるのじゃろ?」

不意に、投げ掛けられた質問に驚きもせず「犬」は答えた。

 

「あぁ、俺も科学者の端くれだ。不思議な桃の事は調べ尽くした…この桃には、中毒性がある。余りの美味さに脳内麻薬が分泌され、人々は高揚感に浸る。そして、食べ終わるとまたそれを欲する。適量であれば問題とならないが、過剰摂取をするとそうはいかない…」

 

次回に続く。