やわらかチキンの独り言

とろとろ〜ほろほろ〜

【新説 桃太郎】第七話

前回までの【新説 桃太郎】

 

「鬼」の蔓延る世界に、桃を媒体に生み出された人造人間である桃太郎。宿での就寝中。三人の同じ顔を持つ美女に首を狙われる!

 

 

 

 

俺の首に当てられた刃が一瞬、首から離れて力強く振り下ろされた瞬間!

 

「ちょい待ち!!!!!!!!!!!!!!」

 

三人の「美詠」の後ろから発せられた大声に、その場にいた全員が一瞬凍りついた。「犬」だ。

 

「維字!薬を盛ったんじゃなかったの?」

維字と呼ばれた一人が首を縦に振った。

 

「あぁ〜、ちょっと苦かったのはそれでか。酒で飲み込んだけど。俺はありとあらゆる薬を試しているから、耐性が出来てるんだよ。さて、話は大体隣で聞かせてもらったけど、俺から一言良いかい?」

 

三人は俺への注意を続けつつ、突然現れた「犬」の出方を伺っている。それを無視して話し始める。

 

「まず、君達のお父さんが亡くなったのは残念に思う。ただ、仇だと思っているその男。そいつは3歳のひよっこだ。お父さんが殺された時にはまだ生まれていないぞ?」

それから「犬」は俺の出生や自分が作った等の国家機密をペラペラ喋り続けた。

 

「嘘よ!この人から父親を殺した奴の"桃の匂い"がするわ。」

それでも全く納得しない様子の「美詠」。

 

「喜来、この人はどんな見た目なの?」

彼女の問いに、「喜来」と呼ばれた彼女は口の動きを読んでいるように見えた。

 

「美詠、私はあなたの匂いの記憶を信じているけど、こいつは私達より年下に見えるわ…そうね、15歳くらいよ。」

 

「そんな…彼の言うことが事実だとしたら、誰がお父さんを殺したの?!」

「喜来」の言葉に戸惑い、力を失ってしまった「美詠」。その瞬間、俺は全力で三人を振りほどき距離を取った。

 

「おい!何で気付いていたのなら、すぐに助けに来ないんだよ」

 

「すぐ助けたら、彼女達の目的が分からないだろ?」

と、ニヤニヤと笑う「犬」に殺意を誰よりも向けていると、「犬」が三人に提案を申し出た。

 

「君達の目的は分かった。しかし、桃太郎は鬼退治をするという大義のため、殺されては困る。そこで提案したいんだけど、良いかな?君達の目的は親の仇を討つこと。そして今、最も有力な候補なのがこの桃太郎。ただ、俺達は鬼退治の旅を続けたい。両者の間をとって、一緒に鬼退治へ行かないか?」

 

は?正気ですか?さっきまで俺の寝首を狩ろうとしていた三人と旅路を共にするというのか?

 

「そうですね………私達は、唯一の手がかりである"桃の匂い"を放つ桃太郎さんの側にいることが、父親の仇を見つける最善の策なのかも知れません。ただ桃太郎さんが許して頂ければですが…」

 

「誰が許す…ぶわぁ?!」

 

「はいはい。それじゃあ決まりだな。そしたら、自己紹介をお願いしようか。」

俺の意見を遮り話を進める阿呆。はぁ〜どっと疲れた。