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やわらかチキンの独り言

とろとろ〜ほろほろ〜

【新説 桃太郎】第五話

前回までの【新説 桃太郎】

 

「鬼」の蔓延る世界に、桃を媒体に生み出された人造人間である桃太郎。生みの親と名乗る「犬」との道中。見目麗しい女性が天から降ってきた?!記憶を一時的に失っている彼女を宿まで案内した。

 

 

 

 

宿で食事の用意が出来るまで、俺と「犬」は彼女との会話を楽しんでいた。名は「美詠(みえ)」。ご両親は既に亡くなっており、妹が二人いるとのこと。しかし、二人の妹とは幼い頃に生き別れてしまい、彼女は妹を探す旅の途中であったとのこと。「犬」はワンワンと泣きながら、彼女の身の上話に同情していた。俺は会話の途中から、あることが気になって仕方がなかった。

 

「失礼だが、目が…見えていないのでは?」

 

俺の問いに、にこりと微笑みながら

「生まれつきなんです。でも、それ以外は元気なんですよ?実は、妹達も少し身体が悪くて…母も病弱であったと父から聞いていました。」

 

「そうだったの?!そしたら一人旅は不便でしょ?目的地までこのDr.ハウンドがお供しますよ。」

キラリと犬歯を光らせて阿呆が力こぶを見せつける。

 

「おい、勝手に決めるな!まぁ、記憶もまだ一時的に失っているようだし、一先ず隣の町まではご一緒しましょう。」

 

「いえいえ、そんなご迷惑をお掛けできません。ただでさえ命を助けていただいた上にこれ以上は…」

遠慮している彼女の声を遮るように「犬」がまた紳士たるもの!と強引に同行することを決定した。

 

その後、運ばれて来た食事を一緒に取り、明朝、宿の外で待ち合わせる約束をして彼女とは別れた。「犬」も楽しかったようで、高いびきで一枚襖を隔てた部屋で眠りに落ちていた。俺も鬼退治という大義のため気を張っていたのが、自分の出生の秘密やらで疲れてしまった。布団の中に入ると同時に眠りについた。

 

丑三つ時、誰もが眠る時間。

 

俺は厠へ行くため、眠い目を擦りながら起きた。用を足して部屋へと戻る途中、大きな月が出ていた。明るい廊下を月を見ながら歩いていると、不意に月を何かが横切った。すぐに目を凝らしたがそこには何も無かった。気のせいだと再び布団の中へと戻った。

 

あの横切った物は何だったのかと思いを巡らせていると、また睡魔がゆっくりと襲ってきた…夜の冷えた空気が顔をなぞる。首の上にひんやりと…

 

?!?!

 

はっ!と、目を覚ました瞬間。

脚、腕、口、そして首を鋭い刃が抑え込んでいた。俺の身体の上に何者かが乗っかっているのが分かった。一人、いや二人?三人に抑えられている。月光に揺らぐ三本の尾が見えた。