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やわらかチキンの独り言

とろとろ〜ほろほろ〜

【新説 桃太郎】第四話

前回までの【新説 桃太郎】

 

「鬼」の蔓延る世界に、桃を媒体に生み出された人造人間である桃太郎。生みの親と名乗る「犬」との遭遇。決意も新たに鬼退治の旅を続けるのであった。

 

 

 

 

「いってぇ〜よ〜。絶対折れてるよ〜。傷害罪だよ〜。慰謝料くれよ〜。おんぶしてくれよ〜。」

そう金色の髪を靡かせる大男が脛をさすりながら、器用に歩いている。もう2時間はやっている。

 

俺は見ないようにしながら次の目的地を目指していた。きびだんごの袋に入っていた紙に「猿」と記された場所だ。

 

「犬」がコレなのだから、きっと「猿」もその言葉の通りではないのだろう。どんな奴が来ようがもう驚きはしないと心を整えていると。

 

「あ、桃太郎。そういえば、おじぃちゃんから旅立つ前に何かもらった?」と、ふいに「犬」が話し掛ける。

 

「何だ、腹でも減ったのか?食うか?」

俺は袋の中へ手を伸ばして一粒取ってやろうという動作をした。

 

「いやいや、いらん!食わないよ。受け取ったか確認しただけ!っていうか、また何も聞かされてないのか?」

呆れながら「犬」は天を仰いで、手を鳥のように広げてみせた。

 

??? 俺が訝しげな顔で、"また"という言葉に食いつく。

 

「おい!いい加減にしろよ?まだ何か隠してることがあるのか?さっさと白状せんと叩っ斬るぞ?」

と、腰にある刀に手を添えた瞬間…

 

「危ない!!!!!」

そう言葉を発しながら「犬」が俺の方へと飛び込んできた!

 

いや、俺の上を…

 

俺の後ろ?

 

「っ、いってぇーーー!!」

「犬」が俺の顔を踏み台にして、高く高く飛び越えていったのを見送った。

 

「大丈夫ですか?」

俺が両手で顔を抑えて地面に伏している先で「犬」の声がした。

 

「だ、大丈夫なわけあるかぁーー?!」

と、怒鳴りながら顔を上げると。「犬」は俺の方ではなく、自分の腕の中で抱えている女性に向けて語り掛けていた。

 

見た目は齢二十代といった若い女性で、老婆以外の女性をあまり見たことのない俺でも美人であると一目で分かる容姿であった。髪は黒く長く、綺麗に束ねられていた。手足はすらっと伸びているが、細過ぎず適度な筋肉が付いていた。そんな女性が気を失っていた。

 

「どうしたんだ?」

顔に足跡が残ったまま「犬」に問いかける。

 

「いや、お前の後ろの木からこの女性が落ちてきたんだよ。驚いた。日本では女性が天から降ってくるのかい?」

と、阿呆がとぼけたことを抜かしていると、女性の眉間が動いた。

 

「う、ぅう…。」

女性は意識が戻るとすぐに「犬」の彫りが深過ぎる顔に驚いて、はっと身を強張らせた。その様子に「犬」は傷付きながら、そっと女性を立たせた。

 

「大丈夫ですか?」

俺が聞くと、女性は自分が気を失ってしまい、それを助けてもらったのだと気付き、深く感謝していた。女性はなぜ自分が気を失ったのか、なぜ木の上にいたのかも覚えてないようだった。ただ、腹の虫が鳴ったので腹が減っていることは分かった。

 

辺りはすっかり夕暮れとなっていた。「犬」は紳士たるもの、か弱い女性をこんな夜更け(?)に一人にしてはならない!と強く主張。確かに記憶を一時的に喪失している様子であったため、彼女の承諾を(無理矢理)得て、宿へと三人で向かうことにした。当然、彼女は一人で俺たちは二人で一部屋だ。