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やわらかチキンの独り言

とろとろ〜ほろほろ〜

【新説 桃太郎】第三話

前回までの【新説 桃太郎】

 

「鬼」の蔓延る世界に、桃を媒体に生み出された人造人間である桃太郎。「犬」との遭遇。その語られる内容に戸惑う桃太郎であった。

 

 

 

 

「日本に来てから3年しか経ってないお前が俺の親だというのなら、その理由を説明してみろ」

俺は金色の髪を靡かせる「犬」に問う。

 

「そこが最も興味深いところなんだ。その不思議な桃というのは、日本でも限られた地域でしか確認出来ていない。通常の桃と最も異なる点は何処だか分かるか?見当もつかないだろ?」

「犬」は勿体振りながらも、教えたいという欲求と葛藤しているように見えた。

 

「知りたいか?仕方ないな〜、特別だぞ?」

頼んでいないが、俺は頷く。

 

「それは"成長速度"なんだ!通常の桃と比較して、その桃の成長速度は"5倍"も早いんだよ。凄くないか?だから、3年かかると言われている桃が約7ヶ月で実がなるんだよ!!!」

 

「そんなmysterious peachが、鬼の発祥の地とされる日本にあると聞いて俺は飛んで来たって訳さ。ただ、その桃は数年前から国の管理下に置かれていて、一般人には食べることも見ることも許されていなかった。まぁ、そこは母国が俺の優秀さにお墨付をくれていたから、鬼退治のためという大義名分もあり、快く研究させてもらったよ。」

 

その後も「犬」は、不思議な桃の研究成果を自慢気に並び立てていたが、俺にはほとんど理解出来なかった…ただ、一点を除いては。

 

「…ということまでは分かっている。だが、まだまだ途中だから、仲間が引き続き研究中なんだ。んで、その不思議な桃の異常な成長速度の原因の一つが分かった。それは"急激な肉体の活性化"だ。」

 

「"急激な肉体の活性化"??」

 

「そう。これにより不思議な桃は通常の5倍という早さで成熟するんだ。そして、俺はこの成分を抽出して新たな生命を誕生させることに成功した!それがお前だ、桃太郎!」

 

絶句。ただ、それしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

俺が桃から生まれた人造人間だと?

確かに、老夫婦は俺の成長の早さに服がすぐ小さくなるとよく嘆いていたのを思い出していた。友達もおらず山奥で老夫婦とだけ過ごしてきたから分からなかったのか…いや、しかし…

俺の頭の中で、これまでの人生がぐるぐると巡っていた。

 

「なんだ、聞かされてなかったのか?あいつら〜言ってあると思ったから饒舌に語っちまったじゃねぇか。」

ばつの悪そうな「犬」は頭を掻きながらこぼした。しかし、すぐにこちらを鋭く見つめた。

 

「おい!桃太郎。しっかりしろ!お前は自分が人間じゃなくて、人造人間だからって何が困るんだ?お前はお前だ。何も変わっちゃいない。それに、お前がこれから鬼退治へ行くという目的に何の損傷も無いだろ?むしろ、俺が生みの親だぞ?光栄に思えよ。間違いなく、そこら辺の奴らよりも絶対強い。」

 

確かに。

俺は「犬」の言葉に我に返った。俺のこれまでの人生は、鬼退治のために過ごしてきたといっても過言ではない。そこは揺らぐはずもなく、むしろ決意を新たにした。

 

ただし、10代の繊細な心に土足でズカズカと侵入してきた「犬」には、脛蹴りだけはお見舞いしておいた。

 

俺は、「犬」と次の目的地へと向かうことにした。